いつか南へ逃げるんだ
昨年から出口の見えないトンネルにどっぱまりの状態で、仕事to仕事の繰り返し、on and on でoffはなし状態が続いていた。ここにきて少し明るい兆しは見え初めて少し気持ちに余裕も出てきているが、精神的にはかなり限界に近いギリギリのところまで追い詰められてしまった。仲間の支え、友人の救い、そして音楽がなければ乗り切れなかったと断言できる。そして、いつか南の島でトロピカルドリンクを飲んで休暇を過ごすんだという強い決意が、聞く音楽にも反映されている今日この頃だ。
HELLOWORKS『PAYDAY』
「今夜はブギーバック」の再演(メモれ! コピペ!)がグッとくる世代、つまり20代後半から30代が直面する閉塞感をこれでもかと盛り込んでいる。いまの時代、誰もが抱えている不安をリリックに落とし込み、SLY MONGOOSEの男泣きトラックと合わせることで誕生した現代版ブルース。個人的にはゲームもやらなけりゃ、ヒマな20代も過ごしていなかったので、アルバム単位でスチャのリリックにここまで全面的に共感したのは初めてかもしれない。
ネーネーズ『ゴールデンベスト』
いま山手線の車内モニターでずっと柴咲コウが沖縄に行ってダラーッと休日を過ごすCMが流れている。BGMや音はないが、短い映像が現実逃避のスイッチを入れる。最近聞いたMIX CDにこのアルバムに入っている「あめりか通り」が入っていて、ガツンとやられた。二枚組みのこのアルバム、一枚目は沖縄民謡で、二枚目はウチナーグチ(沖縄方言)でラップやったりレゲエをやったりと実験的でおもしろい。ボブ・マーリーの「NO WOMAN NO CRY」のカバーなんか、英語以外すべてウチナーグチなので意味わかんないけど泣ける。
関係ないけどジミー・クリフとエリカ・バドゥの「NO WOMAN NO CRY」。
これも素晴らしい。弱ってるときに聞くと一発でやられる。
大昔の全日空スカイホリデーのCM、最高すぎる。
LORD MIKE'S DIRTY CALYPSONIANS『MORE...』
カリプソの歴史を紐解くと1910年代にまでさかのぼる。イギリスの植民地であるトリニダード・トバゴで奴隷として連れてこられた黒人たちが、陽気なメロディに乗せて、当局の検閲を潜り抜けて政策批判を歌うというものだったらしい(すべてネットの情報だけどね)。カリブ海音楽のルーツであり、つまりはレゲエの先祖にあたるということはヒップホップともつながってくるということだ。大昔からディス・ソングとか作ってたらしいし、芸名もみんな派手に「LORD ○○○」とか貴族の称号をつけていたりするのもなんか納得だ。で、この人たちはシカゴのカリプソバンドらしいが、どっかで聞いたことあるような往年の名曲をカバーしてて非常にキャッチーでよい。
これはLORD MIKE〜もカバーしているカリプソの大御所マイティ・スパロウ。1935年生まれで、いまだ現役。このライブのゆるさ、いなたさ、かっこよさはどうだ。
初☆体☆験
渋谷駅近くでふと目に留まった看板につられて、裏通りにある地下の店舗に入った。入り口でいきなり茶が出てくるというお迎えも斬新なそのお店は、ネコのオブジェが玄関に鎮座しており妖しい雰囲気を醸し出している。女性スタッフが出迎えてくれた。カーテンで仕切られた個室と通路は客同士が鉢合わせにならないよう、気配りがされている。2〜3分待ったあとカーテンで区切られた個室に通された。服を脱ぎ、薄く流れるBGMに耳を傾ける。周囲の音を聞くかぎり、他の客はいないようだ。やがて一人の女性がやってくる。女性の手が動き始めると、他の客がいないと分かっていても、声にならない声が出てしまう。
「オキャクサン、ハジメテ?」
「ええ、まあ」
「緊張シナクテイイヨ」
「うん、緊張はしてないよ。初めてだからくすぐったくて」
「クスグッタイ? スグナレルネ。ソシタラ気持チイイカラ」
中国の瀋陽からやってきたという27歳のその女性は慣れた手つき身体に手を這わせていく。
「オキャクサン、結婚シテルノ?」
「なんで? してないよ」
結婚してない理由なんか腐るほどあるけど、適当な理由で自分がなぜ独身かをかいつまんで話した。
「ソウナノ? イマ中国モ晩婚ノ人増エテルヨ」
「へ〜。でも中国って景気いいんじゃないの?」
「昔ニ比ベルト給料ハ2〜3倍ニナッタヨ」
「いいじゃん」
「デモ物価モ2〜3倍ニナッタヨ」
「意味ないじゃん(笑)」
むしろ意味がないのは僕らの会話だろう。中国経済のことなんか正直、どうでもいいシチュエーションだ。やがて話題は再び結婚へ。
「デモ、オ客サン若イカラ、キット結婚デキルネ」
「そんなことないよ。最近ブクブク太ってるし。もうオッサンだよ」
「イマ晩婚ノ人多イカラ、35歳デモ大丈夫ヨ」
「まあ、よくそういう話は聞くけどねぇ。おねえさんはどうなの?」
「ワタシ、マダ結婚シテナイヨ」
このあと朝5時まで働いているという。あまりの快楽に途中で声が出そうになるのをグッとこらえながらの会話は、正直しんどい。クライマックスはだんだんと近づいていた。
「ワタシノ母ガ結婚ニツイテ占ッテクレタンデス」
「へ〜、どうだったの?」
「ネズミ年ノ人ト結婚シナサイッテ」
「ずいぶんアバウトな占いだね(笑)。じゃあ年男の人と結婚するといいんだね」
「ソウミタイネ。デモ、年男ッテ36歳ネ。36歳ニモナッテ独身ノ人ッテ、絶対ニ何カ問題ガアルト思ウンデス。ワタシハ嫌デスネ」
「……おい、さっき晩婚の人が多いから35歳でも大丈夫って言わなかったか?(笑)」
そこで会話は途切れたまま、最後まで彼女は無言のまま制限時間が終了した。
というわけで、初めてのアロマオイル・マッサージでした。アジアっぽい超適当な会話と、背中に独特のオイルを塗ったくってコリを揉みつぶすのは初体験だったけど、これはクセになる! 手で揉んだあと、背中に正座してヒザでダメ押しするのは結構効いたなぁ。精神的に余裕のあるときにゆっくり行きたいかも。
MIX CDを買う理由
LATIN QUARTER『JUICY SUNSET MIX』
V.A.『MOTIVATION 6:ADULT ORIENTED CLICK NONSTOPMIX by MOODMAN』
DJ MIXなんてネット上にいくらでも転がってる昨今「まあ、買うまでもないか」と過ごしていた07年。パーティーやラジオをダラ録りした音源もいいけど、一回も通しで聞かずにゴミ箱行きになるmp3も非常に多い。だが、最後になってガツンときた二枚がコレ。ダウンロード全盛のご時世に盤に落とし込むだけの理由と完成度の高さがあり、そういうものこそ何回も聞きたくなるクオリティがある。LATIN QUARTERはサ上とロ吉の「BAY DREAM〜課外授業〜」のトラックを作ってる人で、それこそ去年は死ぬほど聞き倒してたけど、あの延長線上にあるようなBPM100以下の泣けて爽やかで気持ちいいダウンテンポMIX。ムードマンはギラギラしてないオトナなクリックハウス。どっちも非常にメローでスムースだから、約1時間聞いても耳に負荷が少ないけど、胸をかきむしられてるようで熱くなる。
あけましておめでとうございます
本年もよろしくお願いします。
オーロラ
Aurora - Feast
井上薫とポート・オブ・ノーツのDSKのユニット「AURORA」。このライブアルバムはギター2本とタブラと、あとは風と拍手の音ぐらい。とてもシンプル。黙々と深夜作業するときにはイヤホンで聞くといい。ぐっと集中が高まる感覚を得る。ダラ聞きとも違うし、BGM的な聞き方でもないが耳を取られることもなくすーっと入ってくる。押し付けがましいダンスミュージックの対極にあるような、さりげない美しさが際立っている。
chari chari - in time
chari chari - in time(ultimate collection)
2002年に発売された上のアルバムを聴くまで、しばらくダンスミュージックからは遠ざかっていた気がする。似たような音の焼き直しばかり(実際はそんなことなかったけど)な押し付けがましいダンスミュージックに飽きて、60〜70年代の音楽ばかり聴いていた時期だ。このアルバムはブラジル音楽とかオーケストラとかいろんな生音を使って紡ぎ出された最高に贅沢なダンスミュージックだ。生音をざっくり使うのではなく、素晴らしく編集された調和の産物だった。このアルバムの中で一番大好きな曲「Aurora」はループして何度も聴いた。
chari chari - Aurora(edit)
これがなければリキッドルームに通うこともなかっただろうし、いろんな素晴らしい音楽に出会うこともなかっただろう。心の扉を開いてくれた、自分にとっては凄く大事なアルバムだ。その『in time』がリミックスとDVDと本人の解説がついて、つい最近再発されたので購入。DVDはこの5年前のアルバムがいかにして作られたのかを振り返るドキュメンタリーで「Aurora」がメタモルフォーゼの朝方に受けた影響から産まれたことを知り、さらに感慨を深める。もう何度もメタモルに通ってるが、毎年あの朝方の空気が吸いたくて行ってるようなものだ。
そして、クラブで何度か聴いた「Aurora」のアコースティックバージョンが収録されている。これまた素晴らしい。ここから派生して紹介したAURORAというユニットが生まれている。