24シーズン6


前回のシーズン5でも石油利権とテロとホワイトハウスのずぶずぶな関係を濃密なサスペンスに仕立て上げ、大どんでん返しなラストで見事に溜飲を下げた『24』。そこからどうやって次の話に繋げていくのかと思ったら……(以下ネタバレ注意)。
まだ1〜9巻までしか観てないけど、とにかく今回は重過ぎる! もう観てて具合悪くなった。今回の設定は「もし、アメリカがイラクだったら?」という、仮想現実の世界が舞台になっている。映画『トゥモロー・ワールド』の影響もあるのかも。アメリカのあちこちでテロが頻発する状況が描かれており、LAで原子爆弾が炸裂するという話が描かれている。極限の状況における人種&宗教差別の描写はとてもキツいし、過去に縛られて冷静な判断を失う人々の描写もエグい。

もはや単なる勧善懲悪のアクション・サスペンスではなくなっている。現実とリンクしてアメリカの現状を描写しながら風刺するドラマになっている。攻める側のテロリストはアメリカを破壊するために命をかけ、守る側は「崇高な目的」を目の前に掲げて周囲を巻き込んで戦争へと傾いていく。どっちにしても人が死ぬのだが、どちらかといえば体制側の危険性に焦点を当てている。

そして、人は何のために生きるのか?という非常に青臭いテーマも投げかけている。今日のタイトルはジャックが第一話で語るセリフだ。2年間の拷問の末に、テロリストに生け贄にされるジャックがこのセリフを吐いて「何かのために死ねるなら」と了解するシーンが非常に印象的だ。いままでの『24』にはなかった(あえて言えばそれはテロリスト側の論理だった)死生観をジャックが口にしている。それぞれがそれぞれの「崇高な目的」のために命を賭していく。これがどんなクライマックスに収束していくのか非常に楽しみだ。


それと『アリー・My Love』で敏腕弁護士ジョン・ケージ役だったピーター・マクニコルが絶妙の配役で起用されているのがいい。クロエ役のメアリー・リン・ライスカブも『ゾルタン星人』の中で発見して、おおっ!と思ったけど、もともとコメディエンヌだというし。コメディ畑の人のシリアスな演技は、作品全体の中で凄くいいスパイスになっている。